ブログ

2014年01月03日

有機農業三つの神話 神話2  有機だから美味しい

キレイゴトぬきの農業論

農業用ビニールハウス(パイプハウス)の専門店モリシタの森下幸蔵です。

https://www.morishitahouse.jp/contents/company.html

 


 

 


有機農業三つの神話

神話2  有機だから美味しい

有機だから、必ず美味しいとは限らないという意味です。別な言い方をすれば、有機栽培であることは、美味しいことの十分条件ではないという事です。野菜の美味しさを決めているのは、圧倒的に栽培方法以外の要素なのです。

野菜の味を決める大きな要素は三つあります。栽培時期(旬)、品種、そして鮮度です。僕はこれを「野菜の美味しさの三要素」と呼んでいます。

栽培者としての感覚では、この三要素で8割方決まります。この三つが十分に満たされていれば、栽培方法にかかわらず、誰でもある程度美味しい野菜が育てられます。

〈中略〉

では、有機野菜はなぜ美味しいといわれるのでしょうか?それは有機農業をしている生産者が、結果的に美味しさの三要素を満たしていることが多いからです。

〈中略〉

「有機栽培なので美味しい!」は分かりやすいキャッチコピーですが、美味しさの三要素の方がずっと重要です。「有機だから美味しい!」という人の中には、事実ではないと分かってわざと言っている人と、そもそもこの事を理解していない人、の2種類がいます。より厄介なのは後者の分かっていない人たちです。僕もかつてはそうでしたが、「有機は素晴らしい」という思い込みが強すぎると、本当のことが見えなくなってしまうことがあります。

〈中略〉

この三要素こそが野菜の美味しさを決めると、僕は確信しているので、その点を外さないような野菜づくりを心がけています。まず、旬の時期のものしかつくりません。夏にほうれん草はありませんし、冬にトマトはありません。消費者の方々に野菜を詰め合わせのセットでお送りしていますが、季節によって中身は全く違います。

品種はもちろん、美味しさを中心に吟味しています。一般の方には知られていない美味しい品種が、実はたくさんあります。

〈中略〉

そして、鮮度をとても大切にしています。基本的には注文を受けてから必要な分だけを収穫します。

〈中略〉

僕たちはいい物をいい状態でお届けすることに全ての資源を使っていますので、ご不便はおかけしますが、栽培時期・栽培品種・鮮度には自信があります。

流通が発達したにもかかわらず、市場にはあまり美味しくない野菜が出回っているのも、事実です。これは基本の三要素が満たされていない野菜が多いことの証です。僕は、これこそが一番の問題だと思っています。食べ物ですから、美味しくて栄養のあるのは本来当たり前であるはずですが、残念ながらそうはなっていません。

出典【キレイゴトぬきの農業論】新潮新書 久松達央著

20140102-131506.jpg