農業用ビニールハウス(パイプハウス)の専門店モリシタの森下幸蔵です。
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第2章 野菜がまずくなっている?
コンビニおでんの大根が煮崩れしない秘密
野菜に品種がいろいろあることをご存じの方も多いでしょう。
〈中略〉
農業者の競争環境が年々厳しくなる中、人件費の高い日本では栽培のコストをどれだけ下げられるかが重要な経営課題です。種を販売する種苗会社にも、生産現場のニーズに合わせた品種の開発が強く求められています。病気に強い品種、形の良い品種、寒さや暑さに強い品種、収量の高い品種などなど。この状況では、味や食感という要素が犠牲になってしまうことも少なくありません。
ひとつ例を挙げましょう。冬場のコンビニは、おでんにとても力を入れています。中でも人気ナンバー・ワンは、やはり大根。
〈中略〉
ところで、あのおでんの大根、長時間煮続けているのに煮崩れませんよね。なぜでしょうか?実はおでん専用の大根品種があるのです。おでん用大根に求められるのは、煮崩れないこと、大きさ・断面が一定であること、青首大根のように緑色にならず、どこも白いことなどです。長時間の煮炊きに堪えるので、俗に「客待ち品種」などと呼ばれています。
しかし、煮崩れしないことを売りにしている大根が本当に美味しいでしょうか?僕が考える冬の大根の美味しさは、トロっと煮崩れるあの食感と甘さです。
〈中略〉
一般の消費者向けの品種でも、店頭で目立つように緑色が濃く出る葉物や、萎れにくい代わりに硬いブロッコリーなど、味以外の特徴を前面に押し出した野菜が栽培さてているケースが目立ちます。生産・流通の合理化の中で、美味しさや栄養価の高さという、本来は食べ物として最も重要な要素が、ないがしろにされているのです。
栽培者にできるのは、その個体が持っている特徴を発揮できるようにコントロールすることだけです。栽培で品種を超えることはできません。美味しい野菜を育てたいのなら、栽培が有機であるか否かよりも、品種の選択の方がはるかに重要です。
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出典【キレイゴトぬきの農業論】新潮新書 久松達央著
久松農園のオフィシャルサイト http://hisamatsufarm.com/